もうひとつ、経営環境の変化として、為替の変動の影響を考えてもらう授業の例を紹介しよう。学生参加型授業の典型だ。
為替の変動、つまり円が高くなるとどういう影響が生じるか、わかっているようで、実感しにくい。海外に行ったらどうか、得するか?損するか?、企業で得する企業、困る企業、業界は? これらをすらすら言えるようになって欲しい。それがまさしく企業経営の一挙一投足に影響するのだから、である。さて、どうするか。
ここは米国、まず登場人物は、自動車の営業マンと顧客。学生に、前にでてもらい、芝居を演じてもらう。
昨日、1ドル100円の時、2万ドル(200万円)で自動車の商談が成立した。
翌日、円高で1ドルが80円になった。営業マンは販売価格が、2.5万ドルに値上げさざるを得なかった。顧客にそう伝えたらどうなるか。当然、断られる。
営業マンと顧客の価格交渉が始まる。
2.2万ドル(176万円)と、アクセサリーを追加して、何とか商談がまとまった。
これで、営業マンの利益はどうなるか。日本からの仕入れ価格が160万円とすれば、前は40万円の利益、それが、今回の商談では、16万円に激減、給料ももらえない。日本に向けて仕入れ価格の引き下げを要求する。
次の登場してもらう学生には、日本の工場長を演じてもらう。営業マンは工場長に仕入れ価格の引き下げを要求する。160万円を145万円に交渉。これで営業マンの利益は、31万に戻すことができた。工場長はさて、次にどうするか、当然、製造コストの削減にチャレンジしなければならない。
次の登場人物は、外注業者の社長さんである。それらしい学生に、またまた、出演依頼をする。今の時代、嫌がる学生はほとんどいない。
この業者からは、1個100円の部品を購入していた。これを90円に下げるよう要求し、92円で受け入れることになった。雇用が守れるならやむをえない。
しかし、ここにもう一人の業者がやってくる。海外からの輸入業者である。前は105円の価格だったため、国内業者が受注したが、1ドル80円になったため、84円を提示した。さて、工場長は、92円の国内業者と84円の輸入業者とどちらにするか。結論は輸入部品に決定した。利益を上げなければならないからだ。国内業者は、注文はなくなり、社員を解雇せざるを得なかった。
これらのやり取りは、学生が自分で提案し、交渉してドラマが進む。思わぬ値引きに、シナリオが壊れてしまうこともしばしばである。当然ながら、学生は気がつく、円高によって採用も減るし、シューカツにも大きな影響があると、理解するに違いない。
知識は、学生の別世界の話ではない。身近に、自分の将来に関わることなのだと、感じてくれれば、参加型授業の意義が十分、達成される。当然ながら、この登場人物の学生たちにはボーナスポイントを提供する。
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